「錦秋湖湖底アーカイブ①」からのつづき
【11月12日】
曇り空で肌寒い日でしたが、翌日から天気が荒れるようだったので、探索を決行。
この日は、錦秋湖南側からの探索です。
峠山の林道を抜け視界が開けると、眼下に広大な湖底が広がりました。
よく見ると旧大荒沢駅のホームの跡、右手には大荒沢堰堤(ダム)の遺構が見えます。
湖底まで降り、まずは駅舎跡を目指します。
前日と同様、こちらも地盤が緩い箇所が多かったので、場所を選びつつ、遠回りしながら進みます。
油断すると、こうなります。
旧大荒沢駅付近。
まっすぐに伸びたホームの跡が、駅舎の面影を感じさせます。
その他、何なのかは特定できないものの、見えてくる数々の遺構。
まるで異空間に来たかのような、ノスタルジックな世界がそこにはありました。
下流方面に進むと、大荒沢堰堤が近づいてきました。
遠目にしか見ることのできなかった巨大な遺構が、ついに目の前に!
内部がどうなっているのか、非常に気になるところ。
胸の高まりも最高潮です。
階段までの道のりが水没していないかが危惧されましたが、この日は大丈夫でした。
しかし足元が非常に緩いので、必死の思いで進みます。
コンクリート製の街灯が、まるで欧風建築のようなおしゃれな作りです。
電気装置らしきものは、当然ながら錆び付いていました。
堰堤入口。
小さな波が、足元ギリギリにまで押し寄せてきます。
一瞬、躊躇しましたが、ここまで来たら引き下がれません。
意を決し階段まで到達すると、一気に駆け上がります。
そして、堰堤内部へ。
何とも不思議な空間が、そこにありました。
50年もの間、水の底に沈んでいたとはにわかに信じがたいような頑丈な作り。
これが、巨大な要塞のような大荒沢堰堤の内部です。
堆積した泥で足元が盛り上がり、天井が低く感じます。
遠目から見ていたときは、ここは生活道路として使われていたのではないかと考えていましたが、よく見ると入口には引き戸のレール跡が。
両側には窓枠の跡もあったので、窓がはめられていたのでしょう。
そして、足元には等間隔に開いていた四角い穴。
後で確認すると、これはゲート開閉のための装置があった跡なのだそう。
つまりここは、ゲート開閉のための操作室のような場所だったと推測できます。
反対側の入口を抜け、対岸側へ。
フォルムがとてもかっこいいです。
今ではその規模は計りかねますが、この水の下にはダムの落差があり、湖底もより深くなっているのでしょう。
上流側に回ると、岸には水神様が奉られていました。
おそらく花筒と思われるものが激しく劣化していたのに比べ、石碑に掘られた文字などははっきりと残っていました。
何か神懸かり的な、神秘的なものさえ感じられます。
次から次へと現れる遺構の数々に、興奮冷めやらぬ面持ちのその時!
その瞬間は、まさに忘れた頃に突然やってきたのです。
昨日聞いたような、嫌な音。
スタッフの足が、見事に泥の中にはまってしまいました。
必死の思いで足を抜くも、やはり長靴は泥の中。
それも、奥深く…。
昨日のように救出を試みるも、泥が四方から長靴を締めつけ、なかなか離そうとはしません。
しゃがんでいる場所も足場が緩くて踏ん張りがきかず、もはや万事休す。
泣く泣く長靴に別れを告げ、この日は引き上げたのでした。
(さとう)
「錦秋湖湖底アーカイブ③」へつづく