みなさん、『雪納豆』をご存知ですか?
西和賀町に昔から伝わる郷土料理の一つですが、現在は作っている人も限られ、お店などにも出回っておらず入手が困難なため、知る人ぞ知る『幻の納豆』と呼ばれています。
そんな雪納豆が、最近、全国ネットの深夜番組等で取り上げられたことから、にわかに脚光を浴びています。
西和賀FANにも問い合わせがあり、なんとかこの雪納豆を紹介したいと問い合わせたところ、「じゃあ、雪納豆作りを体験してみる?」というありがたいお言葉。
さっそくお邪魔してきました。
訪れたのは、番組にも出演し、一躍時の人となった中村キミイさんの工房。
長瀬野生活研究グループのお母さん方も集まっていました。
雪納豆作りに使われるのは、まずこの藁。
長い藁と一緒に、何やら短い丈の藁も準備されていました。
さて、この短い丈の藁、一体何に使われるのでしょう?
ヒントは「お・ま・じ・な・い」なのだとか。
ムムム、謎が深まる…。
材料その2。
乾燥させたホオノキの葉。
山に行くと、よく目にしますね。
人の顔ほどの大きさで、落葉するときは「ブァッサァッ!」と大きな音を立てるので、山中ではかなりビックリさせられます。
最初に、藁を折り曲げて藁苞(わらつと)作りから始まります。
折り曲げ方にもコツが要ります。
折り目が、花びらのように放射状になるように曲げなければなりません。
お母さんたちは慣れた手つきで作っていきますが、これがまた難しい!
見るのとやるのとでは大違いです。
折り曲げた藁を袋状に広げ、内側に乾燥させたホオノキの葉を敷きます。
これは、直接藁の中に納豆を入れるよりも、出来上がった時に納豆を取り出しやすくするための工夫なのだとか。
そして、謎の小さい藁。
これをリボンのように結び、煮た豆を藁苞の中に入れる際に、これを一緒に入れます。
なぜなら、藁には納豆菌が付着しており、それにより豆が発酵し納豆となるのだそうです。
言わば、美味しい納豆に変身するための「お・ま・じ・な・い」なのです。
一方、外では…
スコップを持ったお母さんたちが、穴掘りに。
「この辺でいいがな?」
「んだな、この辺に穴掘るべ」
2mほど積もった雪に、大きな穴を掘っていきます。
「なんだぁ、これじゃあチョット狭ぐねが?」
「んだが?」
「下に敷く藁が入んねでばよ」
と言うと、おもむろに穴に入るキミイさんの旦那さん。
手際よく、穴の拡張作業に取り掛かります。
底に藁を敷いて、コンディションチェック。
「ほれ、こんくらいが丁度いいべ」
上々の出来にご満悦の旦那さん。
穴の準備が出来ました!
場面は工房内に戻ります。
7時間かけて煮上がった大豆がコチラ!
これが雪納豆となり、どのような姿に変身するのでしょうか。
楽しみ~♪
一方ではお母さんが、むしろを広げた上に藁を敷きます。
こちらも準備万端。
テーブルにはたくさんの藁苞。
いよいよ本日最大の見せ場、大豆を藁苞に詰め込む作業が始まります!
熱々のうちに藁苞に詰め込み、ビシッと縛る、ここからは時間との戦い。
工房内に緊張が走ります。
「んじゃ、始めー!」
縛られた藁苞は、藁が敷かれたむしろへ。
最終的には、このむしろに包まれた状態で雪の中へ入れられます。
藁苞の上にも藁を敷き、その上から濡らした藁で全体にお湯をふりかけます。
藁からは湯気が立ち込め、まるで旦那さんが魔法をかけているかのよう。
藁苞を包んだむしろを巻いていくのは、キミイさんと旦那さん。
夫婦ならではの抜群のコンビネーション。
「エイホ、エイホ!」
雪納豆が巻かれたむしろを、先ほど掘った雪穴まで運びます。
周囲は、冷たい風が肌に刺すような寒さ。
でも、むしろの中はきっとぽっかぽかなのでしょう。
むしろを穴の中に入れ、さらに藁を被せます。
ここでも藁は大活躍。
昔の生活において、藁はとても重宝されていたのでしょうね。
雪納豆はこの雪穴の中で2晩置かれ、ゆっくりと発酵していきます。
外気が氷点下になっても、雪の中は0℃で安定しているため、発酵の条件に適しているのだそう。
「美味しい雪納豆にな~れ」
祈りを込めながら、雪を被せていくお母さんたち。
目印の棒を立てて、一連の作業が終了です。
あとは3日後に雪から取り出し、室内で1日熟成させると雪納豆が完成します。
工房に戻ると、何やら美味しそうな匂いが。
テーブルには暖かいご飯とお味噌汁、そして寿司漬けや凍み大根のキムチ漬けなど、見るからに美味しそうな料理の数々!
そして、前日に雪の中から掘り出された雪納豆が登場!
遂に、あの『幻の食材』とのご対面です!
どうですか!この糸の粘り!
箸で持ち上げられた雪納豆は、白い糸を引いて、天高く舞い上がりました。
あまりの高さに、カメラのレンズからもフレームアウト!
それはまるで、ジャンプの高さにカメラが追いついていけなかった、ソチ五輪スキーハーフパイプのよう。
そして、きめ細かくも美しくもあるその糸。
それは、まるで白糸の滝を彷彿させるような繊細さと優しさを感じます。
ご飯というステージのセンターに立つ雪納豆。
神々しさすら感じさせられるのは、僕だけでしょうか?
一口食べると、口中に広がる豆の風味がたまりません!
普段食べている納豆よりも身が締まった感じの食感があり、ほかほかのご飯とのアクセントも絶妙でした!
おかずもどれも美味しく、ご飯が進む進む。
食べることに夢中で、食事中の写真を撮り忘れてしまうほどでした。
お腹いっぱいになったところで、食後のデザート・ビスケットの天ぷらが出てきました。
しかも、滅多にお目にかかれない揚げたて!
やっぱり揚げたては美味しさも倍増しです。
満腹だったはずなのに、こちらもいっぱいいただきました。
外に出ると、相変わらずの雪深い景色が広がります。
それはきっと、何十年何百年前と変わらぬ風景。
そんな厳しい環境の中で生まれ、そこに住む人たちによって代々受け継がれてきた西和賀の食文化。
みなさんと食卓を囲んだその時間は、たくさんの笑顔が咲きました。
(さとう)
当日の様子は動画でもご覧いただけますので、併せてご覧ください。 【西和賀NEWS】雪納豆