みなさん、「ハッチョウトンボ」をご存知ですか?
日本一小さなトンボとして知られ、その大きさは1円玉ほどと言われています。
主に平地から丘陵地・低山地の湿地や湿原などに生息しますが、近年の開発や自然環境の変化により全国的にその数が減少しており、保護されています。
西和賀町にも、ハッチョウトンボの棲息地として区画を設け、保護している地域があります。
場所は沢内の貝沢野。
この地域は、大荒沢川などを中心に形成された扇状地の一部で、湧水による湿原が広がります。
平成3年、特にハッチョウトンボの棲息密度が高いこの区域を「貝沢野ハッチョウトンボ棲息地」として定め、今日に至っています。
現地には木で作られた観察路が設けられています。
環境保護のため、そこ以外には絶対に踏み入らないようにお願いします。
周囲には、高層湿原に見られるワタスゲ、コバイケイソウやトキソウ、サワシロギクなどが見られるようですが、訪れた日には見られませんでした。
偶然見つけたオゼイトトンボ。
南方系のハッチョウトンボと、北方系のオゼイトトンボを同じ場所で見られるのもこの地域の特徴なのだとか。
棲息地内にある、ハッチョウトンボの解説を記した看板。
拡大写真なのでその小ささが解りづらいのですが、1円玉サイズということなので…
こんな感じでしょうか。
この大きさのトンボを探し出すのは、相当難しそうです。
とりあえず、飛んでいる虫をくまなく探します。
幸いにも、ハッチョウトンボは飛んでも遠くまでは行かず、すぐに止まってしまうのだとか。
縄張り意識が強いのでしょうか?
小さい蜂や、違う種類のトンボは見つかるのですが、お目当てのハッチョウトンボはなかなか見つかりません。
もはや、根気勝負も辞さない様相を呈してきました。
そして、7月某日。
棲息地に通うこと数回目。
この日は、今まで咲いていなかったノハナショウブが咲いていました。
根拠はありませんが、今までとは違う、何かいいことが起こりそうな予感がします。
しかしやはり、そう簡単には見つかりません。
観察路を3往復ほどし、また日を改めようと諦めかけた…その時!
今まで見たものとは何かが違う生き物が。
草むらの中に、ついにお目当てのアイツが現れました!
手持ちの望遠レンズで、やっと撮ることができたハッチョウトンボです!
ほかのトンボと比べて、腹部がやや短いのがお解りいただけるでしょうか?
羽の付け根部分に色があるのも、この種の特徴です。
1円玉と比較すると、だいたいの大きさが解ると思います。
一旦飛んで、今度はこちらを向いてくれました。
本当、一見するとハエと見間違えるような小ささです。
でも、ちゃんとトンボの容姿をしていますね。
帰り際、近所の方がいらっしゃいました。
10年ほど、ここでハッチョウトンボを見続けているというお父さん。
話を聞くと、その数は年々少なくなってきているのだそうです。
原因として考えられるのは、全体的に湿地が乾燥してきていること。
以前はもっと水が流れ込んでいたそうですが、確かに今は区画内でも部分的にしか湿地が見られません。
所々に生えている雑木も、昔はなかったのだそうです。
西和賀町には、ハッチョウトンボの他にも貴重な動植物が存在しますが、環境の変化によってはその存在が脅かされる可能性もあります。
自然も、西和賀町の大切な「お宝」。
その素晴らしさを永遠に遺すべく、守り続けていきたいものです。
(さとう)